これまでも、ずっと知っていた。
いつも釣りに来ている。
でも、さんたが居たから、そばには寄らなかった。
あいつが居たら、きっと釣り糸に絡まるし、何かにおしっこをかけそうだし。
そして、今日の朝、ずっと知っていたけど話をした事の無かったおじさんから声をかけられた。
「あれ?ひとり?あの犬は?」
「死んじゃったんですよ」
「え?そうなの?そうか、いつも一緒だったからさ、探しちゃったよ。俺もさ、以前は犬を飼っててさ、辛いんだよね、死んじゃうと。だからさ、もう飼わないんだ」
「そうですか」
それから犬の話を少しの間していた。
「ありがとうございました。また」
そう言って、お互いに笑顔で別れた。
もう少し早くに話をしていたら、そう思った。
でも、釣り糸に絡まるからな・・・。